第150回 日商1級 答練③ ~ 工業簿記・原価計算

日商1級答練の第3回は、工業簿記が予算編成の1問、原価計算が設備投資の経済計算の1問という、2問構成でした。1問あたり45分ずつ確保できるので、心理的にはかなり余裕をもって解き進めることができたことでしょう。
1. 工業簿記
予算編成は、出題されにくい分野ですが、初見だと、どこから手をつけて良いか分からず、足切りにあってしまう危険性もある分野です。
予算編成の総合問題は、出題パターンが安定しているので、一度、真剣に解いておけば、本試験では高得点を狙えます。本問を利用して、しっかりと復習しておきましょう。

まず、解き進めるための第一歩は、月々の予算販売量の資料です。予算販売量の資料は、必ず与えられます。
「予算販売量の20%を期首在庫として保有する」といった指示も与えられているはずですから、この2つの資料を使って、各月の生産量を予測します。生産量は、製品勘定の数量ボックス図を利用すれば、差引で計算することができます。解答解説のボックス図の借方、7月49千個、8月45千個・・・となっている部分です。

次に、予算生産量を利用して、原料の月別消費量を予測します。そして、販売予算から生産予測をしたのと同様の手続きで、原料の購入量を予測します。これも原料勘定の数量ボックス図を利用すれば、差引計算で簡単に算定できます。

また、各月の予算販売量から売掛金の発生額を予測でき、各月の予算原料購入量から買掛金の発生額を予測できます。そして、売掛金は「当月発生分の0.6ヶ月分は当月中に回収し、残りの0.4ヶ月分は翌月に回収する。」といった指示が、買掛金は「当月発生分の0.8ヶ月分を当月中に支払い、残りの0.2ヶ月分は翌月に支払う。」といった指示が出るので、これらもまた、解答解説にあるようなボックス図を利用することで、例えば、8月末の売掛金残高や買掛金残高を導き出すことができます。

ここまでは、多くの予算編成の総合問題にある「定型的な解法」ということになります。

ここから先は、作問者のオリジナリティの出るところですが、まず、本問では、全部標準原価計算を前提としています。
なので、各月の予定生産量から算出される予定操業度と基準操業度との相違から、「操業度差異の発生が予定される」ことになります。
予算編成の問題は、直接標準原価計算を前提としている問題と全部標準原価計算を前提としている問題とがあり、後者の場合には、予定される操業度差異の計算を行う分だけ難易度が上がります。ただ、よく知られた論点なので、受験生としては準備しておく必要があるでしょう。

本問のように45分問題となると、資金の借入と返済まで出題されます。
例えば、月末に資金ショートが予定される場合には、あらかじめ月初に銀行からお金を借り入れ、逆に、月末に余剰資金の発生が予定される場合には、借入金を返済するといったパターンです。
お金を幾ら借り、幾ら返済するかは、必ず指示が出ます。わかりにくい指示がでる場合が多いので、完答出来る必要はありませんが、資金予算まで合わせることができると、他の受験生に対してアドバンテージを築くことができるので、計算条件に忠実に従って、資金計画を立ててみて下さい。

2. 原価計算
拡張投資の問題ですが、最後まで完答出来るように、各問が誘導してくれているので、解きやすかったと思います。
解説にも書いておきましたが、既存の生産ラインでの直接材料費2,000円/個が新設ラインだと1,600円/個となることが資料から読み取れたかが唯一の難関です。
合格率が10%程度しかない日商1級に合格するためには、本問のようなレベルの問題であれば、問8まで全て合わせる必要があるでしょう。

工業簿記の予算編成で20点、原価計算の設備投資で25点、合計45点/50点、得点率90%が合格ラインとなります。
合格ラインに到達するためには、予算編成の問題を解く際に、原価標準あたりの資料をぼんやりと眺めていてはいけません。
予算販売量⇒予算生産量⇒予算購入量というルートで解くこと、そのためには、まず、製品勘定のボックス図を描くことから始めることを瞬時に思い出せるくらいの鍛錬が必要です。