第150回 日商1級 答練④ ~ 工業簿記・原価計算

第4回は、工業簿記が工程別の標準原価計算、原価計算が予実分析の問題でした。
時間配分は、工程別の問題の資料から、投入材料が6種類もあるので、こちらを50分、予実分析の問題を40分として解き始めるのが良いでしょう。

1. 工業簿記
部品を2種類自製しており、自製した2種類の部品を投入して、2種類の製品を製造しています。製造部門では、自製した部品だけでなく、外部から購入した材料も投入しており、製造部門は部品製造部門と製品製造部門の2部門となっています。
このように、資料が複雑な場合は、時間を惜しまずに、解説にあるような図を作成するようにして下さい。図を作成している間、10分程度は、全く得点できないまま時間が過ぎていくので、焦りますが、この手の問題は、資料をきちんと整理しないと、ゼロ点になる危険もあるので、「急がば回れ」です。

問1では全部標準原価計算、問2で直接原価計算を行っています。

問2の直接原価計算では、「直接労務費は全て固定費とし、・・・」という指示が与えられていますが、これは、作問者が「直接工への支払い形態は固定給なので、直接労務費は直接原価を構成しない。」と考えているためです。
ここの考え方は、学者によって異なっていて、「変動給か固定給かは支払い形態の区別であって、消費形態はどちらも変動費として消費しているため、固定給部分も直接原価を構成する。」と考える学者もいます。
本問では、前者の考え方が採用されていますが、直接工に対して固定給が支払われている場合、それをどのように取り扱うかは、問題に指示が出ていないか、注意深く確認するようにして下さい。
なお、「固定給部分は直接原価を構成しない」という考え方には、「直接工賃金を直接原価から除外すると、直接原価はほぼ直接材料費だけにということになってしまう」という欠点があり、「固定給部分も直接原価を構成する」という考え方には、「直接原価情報での差額原価収益分析では、埋没原価とすべき固定給部分が差額原価に混入するため正しい意思決定ができない」という欠点が指摘されます。

問3では、「ただし、差異の中に、部品製造部門の責任に属する差異が混入しないようにすること。」という指示があります。例えば、製品製造部門において、「当期の生産には部品の投入は1,600個で済むはずが、実際には1,610個投入されているため、10個分の不利な消費量差異が生じている」というのは、製品製造部門の責任に帰すべき差異なので、本問の差異分析に含めます。
これに対し、「当期に製品製造部門で投入した自製部品は、@6,100で済むべきはずのところ、現実には@×××かかってしまったため、不利な価格差異が生じてしまっている。」というのは、部品製造部門に帰すべき差異なので、本問の差異分析に含めません。
本問で迷うのが、製品製造部門で発生した「外部からの買い入れ材料に関する価格差異」です。これは、製品製造部門の管理者にとって管理不能な場合が多いと考えられますが、部品製造部門と製品製造部門のどちらに帰すべきかといわれれば、製品製造部門に帰すべき差異です。従って、この「価格差異」は本問の差異分析に含めます。

ここまで理解できれば、問4~問6は問題なく解けるはずです。

2. 原価計算
営業利益の予実分析です。
頻出箇所であることと、セールス・ミックス差異、市場占有率差異、総需要量差異についても問いておきたかったので、第2回に引き続き、再出題となりました。
通常の予実分析と同じく、差異分析のためのボックス図さえ正しく描くことができれば、満点が取れる論点なので、是非、ボックス図の描き方を習得して下さい。
FINでは、古くから一橋大学系の、すなわち日商1級の作問を長年やってきた学者のボックス図をそのまま使用しています。
専門学校によっては、その学校独自のボックス図を受講生に強いていますが、相当、混乱しているはずで、ちょっと、可哀想な感じがします。
私も長年講師をしていますが、予実分析の分析図は、一橋大学系の教授が好んで利用しているボックス図が一番、使い勝手が良いです。何しろ、日商1級の作問をしている人たちが使っているわけですから・・・。

問題の展開としては、まず、販売ルート別に、貢献利益差異を価格差異、変動費差異、販売数量差異に分析します。

次に、販売数量差異をセールス・ミックス差異と総販売量差異に細分析します。
このとき、分析図の横軸の真ん中の数量B’Oは「実績の販売量計と予算の販売量の組合せで計算したもの」でした。
標準原価差異分析の配合差異と歩留差異のときと同じく、横軸の真ん中の数量は、「実際の数量合計と予定の割合」の組合せになります。

さらに、総販売量差異を市場占有率差異と市場総需要量差異に分解します。
先ほど、セールス・ミックス差異を求めたときに、解説図のB’Oとして「実績の販売量計と予算の販売量の組合せで計算したもの」を使用しました。
この「実績の販売量計」は「実績の総需要量×実績の市場占有率」で構成されています。
そしてこの場面でも、次に横軸の真ん中に作る数量は「実際の数量合計と予定の割合」の組合せになります。
セールス・ミックス差異とか市場占有率差異といった「割合に関する差異」を計算する場合には、常にこの「実際の数量合計と予定の割合」の組合せを使用する、と考えて下さい。
従って、B”Oは、「実績総需要量×予算占有率」の組合せで計算します。

ここまで理解できれば、本問は満点です。

全体を通して、難解な設問、初見の論点はなかったはずです。
工業簿記の工程別の標準原価計算で22点、原価計算の予実分析で22点、合計44点/50点、得点率88%が合格ラインとなります。