第150回 日商1級 答練⑤ ~ 工業簿記・原価計算

第5回は、工業簿記が組別+工程別総合原価計算、原価計算が最適セールスミックスの決定問題を含む設備投資の経済計算でした。時間配分は45分ずつということになりますが、工業簿記はもう少し時間が必要だったかも知れないです。全体での得点を最大化するために、また、悔いを残さないためにも最初に決めた時間配分を厳守して下さい。

1. 工業簿記
問1、問3、問4
組別+工程別の組合せなので、総合原価計算の中では最も資料が多くなります。
しかも、2工程で2種類の製品を生産している場合、通常であれば、2つの工程に集計された製造間接費を各製品組に時間基準で配賦するだけですが、本問ではさらに、2つのコストプールが用意されています。
コストプールは「原価の集計場所」という意味なので、コストプール1と2に集計されている製造間接費を「第1工程-製品X」、「第2工程-製品X」、「第1工程-製品Y」、「第2工程-製品Y」の4カ所に予定配賦するだけですが、いつもと異なるため、ここで止まってしまった受験生も多かったと思います。
逆に、ここさえクリアできれば、後の計算はたいしたことはありませんでした。
組別+工程別は、資料の金額を自分のボックス図に適切に集計できるかが勝負所です。
なお、総合原価計算の原価配分は、解説のボックス図で一目瞭然のはずですから、ここでは割愛します。

問2
「原価計算基準」で使用されている用語の穴埋め問題です。
日商1級では、たまに本問のような穴埋め問題が出題されます。たまにしか出題されないので、「原価計算基準」を繰り返し読んだり、暗記したりするのはつらい作業ですが、余裕のある方は、「原価計算基準」まで手を広げるようにして下さい。
「原価計算基準」の学習用に、「スマホ用の穴埋め問題集」をお渡ししていますが、これは、短答式試験で「原価計算基準」の正誤問題が必ず出題される会計士講座でも使用しているもので、結局、この「スマホ用の穴埋め問題集」の利用が最も効率的な「原価計算基準」の学習方法になります。

2. 原価計算
設備投資の経済計算の前段階で行われる最適セールスミックスの決定がメインとなる問題です。
直接労務費と製造間接費ほか、直接材料費以外は全て固定費という設定なので、販売価格から製品単位あたり直接材料費を控除したスループットが貢献利益となります。
制約条件は設備1と設備2の稼働可能時間と各製品の最大需要量です。

問1
最適セールスミックスの問題では、各製品の最大需要量まで販売できれば、当然に「全社利益が最大」となります。
次の問2の問題文を見れば、問題の流れからいって「おそらく、問1は最大需要量だけ生産・販売する簡単な問題だ!」と判断できるはずです。

問2
本問では、各設備の稼働可能時間の制約から、最大需要量までは生産できない設定になっています。
このようなケースでは、通常、「設備1で製品Aを生産した場合の1分あたり貢献利益」、「設備2で製品Aを生産した場合の1分あたり貢献利益」、「設備1で製品Bを生産した場合の1分あたり貢献利益」、「設備2で製品Bを生産した場合の1分あたり貢献利益」の4つの「制約条件1単位あたり貢献利益」を計算し、その大きいものから、最大需要量の範囲内で優先的に生産・販売する、と考えるはずです。
この考え方によると、設備1で製品Aを480個、設備2で製品Aを320個、設備2で製品Bを120個生産するという結論になってしまいます。
ある程度のレベルに達している受験生のほとんどがこの解答にたどり着いたはずです。しかし、正解ではありません。そして、問2で誤ると、以下全滅です。
それでは、どのように考えれば良かったかというと、設備1で製品Aを生産するのが最も利益効率が高いのですが、設備2で製品Bを生産するのがあまりにも利益効率が悪く設定してあるので、「設備2で製品Bを生産しないことを優先させた方が全体利益を最大化できる」と考えれば良かったということになります。

問3
本問も、問2と同じカラクリが仕組んであるので、それに気づかないと正解できません。
解説に書いるように、設備3で製品Bを優先的に生産するのが利益効率が高いのですが、設備2で製品Bを生産するのがあまりにも利益効率が悪いので、設備2で製品Bをできるだけ生産しないようにする配慮が必要になります。

問4
問3の最適セールスミックスを前提とする設備投資の経済計算です。タイムテーブルは、解説を参照して下さい。

結局、原価計算の意思決定問題は、ほとんどの受験生が問1しか正解できなかったはずです。
手も足も出ないということであれば、工業簿記の問題に計算ミスがないか、チェックをして過ごすことになりますが、正解ではないにしても、自分なりに正解だと思える解答が得られるので、よけいに「始末に悪い問題」です。問題自体は、よく練られた良問なのですが・・・。

従って、工業簿記が23点、原価計算が6点で、合計58%を合格点とします。