第150回 日商1級 答練②~商業簿記

商業簿記については、連結会計、企業結合、事業分離、本支店会計を中心に学習しておけば良いでしょう。特殊商品売買や帳簿組織からの出題可能性が低くなったため、学習対象となる分野も狭くなった印象です。
第150回対策として、連結の問題を多めに出題しました。
連結会計の問題は、下書きにタイムテーブルと連結修正仕訳を正確に書ければ、完答が狙える分野です。
連結は、良質な総合問題を繰り返し解くのが最も効率的な学習方法です。第150回目標の答練で出題した6問と、計算問題集vol.2の連結総合問題21問の合計27問をしっかりと復習しておけば、他の受験生に負けることはありません。

日商1級 答練 第2回 商業簿記
問題1(連結会計)
論点としては、その他有価証券評価差額金、商品売買(ダウンストリーム)、建物の売却(アップストリーム)です。
問1 売上原価の金額
商品売買(ダウンストリーム)は、売上高と売上原価を相殺し、前期末の未実現利益を当期に実現させ、当期末の未実現利益の調整を商品勘定と売上原価勘定で行うといういつもの手順です。

問2 建物の金額
建物の売却(アップストリーム)については、過年度売却分であることとアップストリームという2つの論点を含んでいたので、得点できればアドバンテージとなるはずです。過年度分の売却益(利益剰余金-S/S期首-)、及び過年度分の減価償却費(利益剰余金-S/S期首-)の取消しと、それに伴う非支配株主持分の調整が必要になります。問2が出来ないと、連結の問題にありがちですが、連鎖的に問3~問5も間違えてしまいます。

問3 利益剰余金期首残高
配当を行っていないということなので、タイムテーブルは、X4.3/31のS社利益剰余金からS社当期利益を控除したものをX3.3/31のS社利益剰余金とします。次に、その他有価証券評価差額金ですが、期中に売却した株式もあるので、資料を丁寧に読んで、X3.3/31とX4.3/31の金額を算出する必要がありました。タイムテーブルが描ければ、いつもの計算で正解できるはずです。

問4 非支配株主持分
タイムテーブルから計算されるS社純資産合計×30%だけでなく、アップストリームによる前年度の建物売却で、連結修正仕訳として、S社の利益剰余金-S/S期首-を減額させたので、それに応じて非支配株主持分も減額させることになります。また、当期の減価償却費の調整によりS社の当期利益が増加するので、これに応じて非支配株主持分を増額させる必要があります。

問5 親会社に帰属する当期純利益の金額
「当期純利益」、「親会社に帰属する当期純利益」、「利益剰余金期末残高」が出題されたら、後回しにするのが受験上の王道です。本問でも、売上原価の調整、建物売却に係る調整、のれん償却、S社利益の非支配株主持分への振替が全て正確に処理できないと合いません。

問6 その他の包括利益
S社が保有するその他有価証券は、その一部が当期中に売却されています。売却したA社株式の評価差額は、期首残高からゼロへと減少しています。それに対して、A社株式以外の評価差額は増加しています。従って、両者を相殺した金額が答えとなります。

問題2(連結会計)
論点は、15%→70%の段階取得、税効果会計、未達商品を含む商品売買(アップストリーム)、貸倒引当金の調整、評価差額の実現に係る税効果会計の適用です。

問1 のれんの金額
15%→70%の段階取得の差損益は、「既存株式を支配獲得時の時価で再評価した金額」と「既存株式の取得原価」の差額で算出します。土地の評価差額は、支配獲得日に一括計上し、「支配獲得時のS社株式時価で再評価した投資額」と「P社持分」との差額は「のれん又は負ののれん」とします。

問2 繰延税金資産
税効果会計の計算対象については、問題に細かく指示されていました。計算対象については、指示がない場合もあるので、土地の評価差額と成果連結の連結修正仕訳に税効果会計を適用することは思い出せるようにして下さい。

問3 期末利益剰余金
本試験であれば捨てる問題ですが、解説に記した計算プロセスはしっかりと確認して下さい。

問4 非支配株主持分
タイムテーブルの期末利益剰余金に加味するものとして、△未達処理後の期末商品の未実現利益×0.6(税効果会計)、+貸倒引当金繰入額×0.6(税効果会計)までは計上できてほしいところです。本問ではさらに、「評価差額の実現に係る税効果会計の適用」という論点が含まれていました。簿記論Ⅰのテキスト第6章P08で取り扱っていますが、受験生の多くが解けないような論点なので、ここは不正解でも仕方がありません。
S社保有の土地は、連結上は支配獲得時の時価で評価されるので、個別会計上の売却益は過大計上となっています。従って、外部に売却した土地の評価差額の金額だけ、個別上の売却益を減額修正する必要がありますが、ここでも税効果が適用されますので、結局、売却土地の評価差額×0.6だけ、連結上の利益剰余金を減額修正することになります。この金額は問3、問6でも使用します。

問5 売上原価
これは、いつも通り、個別上の売上原価合計額に、売上高と売上原価の相殺消去と未実現利益に係る連結修正を加味するだけです。連結上の売上原価は、ダウンストリームかアップストリームか、或いは税効果会計を適用するかによって変動しないので、ここは確実に得点したい論点です。

問6 親会社に帰属する当期純利益
「親会社に帰属する当期純利益」は一般的に調整項目が多く、特に、本問の場合、問4で説明した「評価差額の実現に係る税効果会計の適用」も関連しますので、捨て問ということで良いと思います。

第2回答練 商業簿記の感想は以上です。