平成31年度第Ⅰ回 短答答練~管理会計論②

2018年12月目標短答答練第2回の管理会計論の感想です。
問題は本試験と同じく16問構成で、原価計算基準3問、原価計算基準以外の理論4問、計算9問という構成です。計算がやや多めなので、捨て問の数は2問でも構いません。

問題2 費目別計算
前回の感想でも指摘したとおり、計算の1問目が解きにくいことがよくありますが、本問がまさにその問題です。材料の外注加工は、無償支給と有償支給の大きく2パターンあって、無償支給はさらに2パターンに分かれるので、この論点は、3種類の仕訳が出来るように準備しておく必要がありますが、ほんの一握りの受験生しか解けないはずです。
テキストに綺麗に図解してあり、講義でも一通り説明していますので、余力のある方のみ復習しておいて下さい。

問題4 個別原価計算
本試験での個別原価計算は、難易度に大きな差があって、簡単な問題は2~3分で解けますが、厄介な推定問題だと10分費やしたのに解けなかった、ということもあり得ます。60分のうち10分かけて正解が得られないときの精神的なダメージは大きいですが、そういった問題が過去に2回ほどありました。個別原価計算の推定問題は要注意です。ただ、この答練の問題は、ほどほどの難易度なので、標準的な解答時間である7~8分で確実に正解しておきたいところです。

問題5 単純総合原価計算(逆進問題)
資料に、完成品原価、期末仕掛品原価、異常仕損費の金額が与えられているということは、逆進問題です。
総合原価計算の逆進問題も過去に何回か出題されていますが、慣れていないと時間がかかってしまいます。本問を利用して、こういった計算パターンにも慣れるようにして下さい。

問題6 工程別総合原価計算(非累加法~追加材料の投入~生産量の増加しないケース)
工程別総合原価計算で追加材料が投入されるというパターンはよくありますが、通常は、累加法を前提にしています。ところが本問では、非累加法が計算条件とされています。工程の途中点で追加材料を投入する非累加法については、取り扱っていない専門学校もあるので、B原料をどのように計算すれば良いのか、全く見当がつかない受験生もいる論点です。非累加法は、ボックスの書き方に慣れてしまえば、累加法よりもむしろ楽に計算できるので、テキストにある色々な計算パターンも目で追って確認するようにして下さい。

問題8 標準原価差異分析(直接労務費の歩留差異・能率差異)
たまに出題される「直接労務費の歩留差異・能率差異」です。「実績データによるボックス図」の他に、「標準減損を前提としたボックス図」を作成する必要があります。標準減損は、いつも通り「当期の減損発生点通過量を調べる」作業をして、それに標準減損発生率を乗じるだけです。
SHは、「標準減損を前提としたボックス図」の当期投入の括弧書き数量に、標準作業能率を乗じて求めます。そうすることで、「減損発生率も標準、作業能率も標準」という、まさに標準作業時間が計算できるわけです。
次に、S’Hですが、これは、「実績データによるボックス図」の当期投入括弧書きの数量に、標準作業能率を乗じて計算します。
最後に、SHとS’Hの差から歩留差異を、S’HとAHとの差から能率差異を求めます。
解説図を見れば一目瞭然ですが、歩留差異は「余分な材料投入が生んだ余分な作業時間」ということなので、「標準減損を前提としたボックス図から計算したSH」「実際減損を前提としたボックス図から計算したS’H」の差として計算しています。また、能率差異は、当期の実際の作業量(=「実績データによるボックス図」の当期投入括弧書きの数量)を標準能率で行っていれば実現できた作業時間(=S’H)と、その実際の作業量を実際の作業能率で作業したことで実際にかかった時間(=AH)の差として計算しています。

問題9 業務的意思決定
最低販売価格を求めるような問題では、求めるべき最低販売価格をXとおいて、計算式を作る方法がよいでしょう。本問では、遊休生産能力で生産できるのは、製品Aであれば200kgですが、加工時間が1.6倍かかる製品αだと125kgだけになってしまうというところがポイントです。

問題10 直接原価計算(固定費調整)
4期間ありますが、資料はごくわずかなので、解きたくなる問題です。
ただ、選択肢の文章を見ると、色々と計算させられるので、全部原価計算と直接原価計算の比較問題が得意な人以外は、とりあえず後回しにした方が良さそうです。
結果的に簡単だったかも知れないですが、それは結果論なので、たとえ捨て問とした方も、後悔する必要はありません。
アでは、4期間の全部原価計算による営業利益合計を求める必要がありますが、直接原価計算の方が簡単なので、直接原価計算で代替できないかを確認します。4期間の生産量と販売量は6,400個で一致しているので、両原価計算方式の営業利益は一致します。直接原価計算方式の営業利益であれば、短時間で計算できるはずです。
イでは、第2期の全部と直接の営業利益が問われています。直接の営業利益は短時間で計算できますが、全部原価計算の営業利益をどう計算するかは迷うところです。全部の営業利益を最初から計算するか、ゼンチョクマッシュの計算公式が成立するかを確認した上で、計算公式にあてはめて全部の営業利益を算出するかですが、本問の場合、全社の方が早そうです。
ウ・エは直接原価計算しか問われていないので、イよりも先にウ・エを計算して、選択肢が確定できないかを検討した方が賢明です。「イは、ちょっと時間がかかるなぁ」と思ったら、次の選択肢を先に計算するといったテクニックも使うようにしましょう。
今回は、直接原価計算で計算できる選択肢に絞って解くと、アとエが誤りであることが簡単に確認できる問題でした。

問題11 原価管理(理論)
デザイン・イン承認図メーカー・貸与図メーカー原価企画許容原価・成行原価について問うた問題ですが、すべて知っている概念のはずですから、合わせないといけません。

問題12 営業利益の予算実績差異分析
良く出題される論点で、しかも、何のひねりもない問題です。定型的な差異分析のボックス図にあてはめるだけで正解できます。

問題13 管理会計総論(理論)
管理会計総論に関する理論問題は、専門学校の解答速報で、解答が分かれることのある分野です。この分野の問題で時間を使うのは賢明ではありません。
テキストと講義内容だけしっかりと頭の中に入れておいて、本番では、「正解できれば儲けもの」くらいのスタンスでやり過ごすようにして下さい。

問題14 資金管理
よく問われる論点なので、「オペレーション・サイクルの図」を下書き用紙に書けるように準備しておくことは、受験生としてのマナーだと考えるようにして下さい。「オペレーション・サイクルの図」を下書き用紙に書けないと、問題に参加することすら出来ません。図を覚えるにあたり、例えば、「棚卸回転期間は仕入れた商品が販売されるまでの期間」で、・・・・ 「キャッシュ・コンバージョンサイクルは、仕入代金支払いから売上代金回収までの期間」というような噛み砕いた内容をブツブツ言いながら覚えると良いでしょう。

問題15 事業部制組織(理論)
ファブレス生産、コア・コンピタンス、経営レバレッジ係数、内部振替価格(実際原価基準・標準原価基準・変動費基準)、真性プロフィットセンターなどについて問いました。忘れてしまっている概念は、テキストで確認しておいて下さい。

問題16 設備投資(購入かリースか)
作問者が「絶対に満点は取らせない」という強い意志を持って作った問題です。
購入案のタイムテーブルにファイナンス・キャッシュ・フローを入れるように指示されていて、しかも、元本均等返済ではなく、元利均等返済なので、8分程度で解き終えることは、ほぼ不可能です。短答式試験合格後に、論文式の対策問題として使って下さい。

計算が多めで難易度も高く、本試験であれば、どこの専門学校の解答速報でも「近年で最も難しかった」と評価するような内容でした。
本試験でこのような計算多めで難しい問題が出題されても、「動じずに、たとえ得点が伸びそうになくても、自分が現時点で出来る最高のパフォーマンスを60分間継続する」ことが、結果として合格へと結びつくことになります。
今回の答練であれば、60%で十分合格ラインです。