第150回 日商1級 答練⑤~商業簿記

問題1(連結会計)
論点は、子会社株式の一部売却(80%→60%)、持分法適用会社株式の一部売却(25%→20%)、その他有価証券評価差額金、償却資産の売却(ダウンストリーム)、未実現利益の消去(ダウンストリーム)、税効果会計です。論点は沢山あって難易度の高い問題ですが、焦らずに、得点できる箇所を探してみましょう。

問1 非支配株主持分
償却資産の売却も商品売買もダウンストリームなので、子会社の利益剰余金に影響はありません。なので、注意すべきは、土地の評価差額に税効果を適用させることくらいです。土地は、支配獲得時に評価損が計上される、珍しい出題パターンですが、いつもプラスで計算しているところをマイナスとして計算するだけなので、初見でも解けるはずです。合格するためには、問1は得点する必要があります。

問2 その他有価証券評価差額金
解説にある「図で考えるとわかりやすいです。」の図を見れば、一目瞭然です。その他有価証券評価差額金は利益剰余金と同じく、支配獲得後に増減した分、及び持分法適用後に増加した分のみを親の「その他有価証券評価差額金(税効果適用後)」に加味します。その際に乗じる持分は、シンプルに、期末持分を使用します。持分法適用会社の「その他有価証券評価差額金」はテキストに収録していない論点です。解説には計算式も記しましたが、ほぼ自分では再現できないと思います。対照的に、図は、すごくシンプルで頭に入りやすいと思うので、図で覚えるようにして下さい。

問3 資本剰余金
子会社株式の一部売却によって、資本剰余金が変動することは誰でも思いつきます。このとき、税効果会計が適用される計算パターンもテキストに収録しています。ただ、テキストに載っているのと、解けるのとは、また別の話ですし、本問ではさらに、S社株式の売却仕訳に、売却分の「その他有価証券評価差額金」の減少まで加味する必要があるため、本試験で出題された場合、正解率はゼロに近いような問題です。

問4 A社株式
持分法適用会社であるA社株式の金額は、個別の金額に、+A社の利益剰余金増加額に対するP社持分の部分、△のれん償却、+その他有価証券評価差額金増加額に対するP社持分の部分、△未実現利益までは、計算できてほしいところです。ただ、最後に加味すべき「A社株式売却に係る連結修正仕訳」は難易度が高いです。

結局、問1しか合わせることが出来ない受験生がほとんどのはずです。結果論ですが、問2~問4については、手もつける必要はない問題でした。

問題2(連結会計)
論点は、在外子会社株式の一部売却、子会社の吸収合併、未実現利益の消去(ダウンストリーム)です。

問1 非支配株主持分
在外子会社であるS社の純資産額の円換算額を計算するにあたり、資本金(HR)+資本剰余金(HR)+・・・・としていると時間がかかります。すぐに気づいたと思いますが、資産と負債の差額(ドル建て)をCR換算する方が圧倒的に早いです。これに40%を乗じるだけです。ダウンストリームなので、未実現利益の消去による影響も受けないですし、得点しておきたい問題です。

問2 為替換算調整勘定の当期増加額
為替換算調整勘定は、① 資産・負債と純資産とで適用される円換算レートが異なることで生じる金額と、② のれんについて、年々の償却額を控除して計算した金額と期末B/SのれんのCR換算額との差額として計算する金額の合計額となります。①も②も定型的な計算なので、解説の図解を頭の中にイメージできるくらい、しっかりと学習しておく必要があります。なお、為替換算調整勘定は、連結B/Sと連結包括利益計算書の金額は一致しないことも、解説の(参照)で確認しておいて下さい。

問3 資本剰余金
子会社株式の追加取得や一部売却を行っている問題で、資本剰余金の金額が問われるのは、よくあるパターンです。本問では、S社株式の売却とX社の吸収合併を行っており、その両方で資本剰余金が変動しますが、S社株式の売却による変動は出来なければいけない論点のはずです。ただ、今回は、在外子会社のため、消去すべき売却損益やS社株式の簿価をどの円換算レートを使用するかといった論点も含まれるため、通常の計算よりも難易度が高くなっています。
子会社の吸収合併については、被合併会社の資産負債の80%を被合併会社の株式を償却して取得し、残りの20%を合併会社の株式を発行して取得したと考えます。この2つの取引は別々に仕訳を行います。
一つ目の仕訳では資産負債の80%、土地は支配獲得時に時価で80%を取得、のれんは連結上の期末簿価を全額資産計上し、差額は「抱合せ株式消滅差益」とします。
二つ目の仕訳では、資産負債の20%、土地は支配獲得時に時価で20%を取得、P社株式交付数に応じて資本金計上、差額は「資本剰余金」とします。

問4 親会社に帰属する当期純利益
P社の当期純利益に加減算する項目としては、S社の当期純利益×80%、のれん償却額、受取配当×80%、未実現利益×20%、子会社株式売却損益です。問2、問3が難しいので、問4に時間を費やして、合わせてほしい問題です。

日商1級の本試験において、連結会計や企業結合は避けては通れない分野ですが、問題パターンは無数に考えられ、対応の難しいところです。
色々な論点を含んだ良質な総合問題を数多く、そして繰り返し解くことで、合格ために正解すべき設問か、他の受験生も解けないような、手を出すべきではない設問かが見分けられるようになります。

計算問題集vol.2の総合問題21問と、答練の6問を繰り返し見直すようにして下さい。

FINの日商1級講座で使用している教材は、会計士講座、税理士講座でも使用しています。その分、やや難易度が高くなっていますが、1級講座の教材を終えれば、あとは、財務会計論の理論、企業法、監査論といった理論科目の学習で、会計士短答式の合格レベルにまでもっていけます。1級受験後に、是非トライしてみて下さい。