監査論は、60%が監査基準委員会報告書からの出題です。 実務指針である監査基準委員会報告書を、実務経験のない受験生が学習しなければならない難しさがあります。しかし、出題の多くは過去の本試験問題と似通っており、しっかり過去問対策をすれば十分攻略することができます。過去問において出題頻度の高い論点、その周辺論点を重点的にインプットしていく学習方法が、効果的かつ効率的といえるでしょう。

本試験問題では4つの記述から正しい2つの記述を選択させます。4つの記述のうち3つの正誤が判定できれば正答できるはずですから、本試験で出題される内容の75%の正誤が判定できる水準が学習の目安になります。

Ⅰ. 学習方法

  1:主要基準

出題の20~30%程度を占める主要基準は、中でも「監査基準」が重要です。 実務指針である監査基準委員会報告書の基礎となるものであり、いわばダイジェスト版ともいえます。 監査特有の表現に慣れるためにも、監査の全体像を把握するためにも、何度も目を通すべきでしょう。
「監査基準」の改訂前文を含む主要基準は、テキストに収録し、かつ、キーワードは赤字にしています。 各章の復習の際には関連基準に必ず目を通し、キーワードをインプットしていきましょう。また、「監査基準」は幾度も改訂を経ており、改訂箇所は問われやすい傾向があるので、特に注意して覚えていくようにします。

  2:監査基準委員会報告書

出題の60%程度を占める監査基準委員会報告書について、膨大な原文を直接の学習対象とするのはあまりに不効率と考えています。そのため、短答式試験対策としては監査基準委員会報告書を受験生が読み込むことはお薦めしません。出題傾向に合わせて論点が取捨選択された教材を利用して、効率よくインプットしていきましょう。また、そもそもが実務指針としての性格をもつ報告書なので、実務経験のない受験生、社会人経験さえない学生の方には困難なこととは思いますが、会計実務の現場や監査の現場をイメージして読み解き、理解する必要があると考えます。

  3:その他の法令(会社法、金融商品取引法、公認会計士法等)

出題の10~20%を占めるその他の法令からの出題は、監査に関連する論点に偏って出題される傾向があります。従って、網羅的に学習するよりも、過去問での既出論点、その周辺論点に的を絞って効率的に学習するようにしましょう。会社法や金商法からの出題は、企業法で学習している内容とも重複しますので、両科目での出題を想定して学習すると効率的です。

Ⅱ. 教材の紹介

監査論は、分野毎に関連する監査の基準等に従って、出題頻度の高い内容を中心に学習します。
テキスト記載の知識は、「20問×4記述=80記述の75%は正誤が判定できるように、少なくともこれだけはインプットしておきましょう。」という内容です。インプットしやすいようにできるだけコンパクトにまとめていますので、繰り返し目を通して覚えていきましょう。もちろん、監査特有の難解な表現も多く、実務的な内容も多いですが、講義ではスムーズなインプットに役立つように、具体的な事例を紹介しつつ平易な表現で解説を行っています。また、実施論や報告論を学習すると、監査総論や主体論も理解しやすい側面もありますので、学習が一巡してからもう一度講義を受講し直すことも、理解を深めるアプローチになると思います。

過去問の類題が多いという出題傾向を踏まえ、過去問を類題ごとに整理した章末問題を作成し、一つ一つ丁寧に解説しています。知識としては頭にあったはずなのに、切り口を変えて出題されると間違えてしまうことはよくあります。類題をまとめて解くことで理解が深まり、そうした失敗を防ぐことに役立ちます。合格者から特に好評を得ている章末問題でもありますので、是非繰り返し取り組んでください。

  1:監査論Ⅰ  (講義時間: 22時間) 

監査論Ⅰでは、監査総論・主体論・実施論・報告論を取り扱っています。

第1章 監査総論は、平均2問/20問の出題がある重要分野です。内容の抽象度の高い分野という特色があるので、監査を始めて学習する方にとっての最初の関門です。講義の始めに監査を取り巻く状況を図示して説明してはいますが、それでもなかなか理解に苦しむ内容ではあると思います。最終的には、テキスト記載の正誤判定のために必要な知識は、全てインプットしていただく必要がありますが、まずはおおよその内容を把握して学習を先の章へ進めましょう。不明確な語句等が生じた都度、振り返って確認するようにしてください。

第2章 主体論は、監査人の人的条件を内容とし、職業的義務についてはその義務違反が監査人の責任に関わってくるため、制度論とも関係します。監査人の責任に関わってくることから、関連する概念が、厳密に区別されて定義づけられているので、その点に注意して覚えていくようにします。

第3章 実施論は、平均2~3問/20問の出題がある重要分野です。一連の監査実務の流れの中でどの部分を学習しているか、時系列でどのタイミングか、といった点を意識して学習されると良いと思います。また、監査実務の現場に関する内容ですから、イメージがわきやすいように講義では事例を挙げて説明し、テキストにも多くの事例を記載していますが、事例の知識が重要になってくるのはどちらかと言えば論文式試験の事例問題です。短答式試験対策としては、事例の内容は一般化された内容の理解を助ける程度に確認していただくだけで十分です。

第4章 報告論は、平均2~3問/20問の出題がある重要分野です。「監査基準」の改訂箇所も多く、学習範囲に比しての出題率はトップクラスです。まずは監査報告書の記載事項を「監査基準」→監査報告書の記載例→「監基報」の順に確認していきましょう。「監査基準」の報告基準はとてもよくまとまっていて覚えやすいのですが、監査報告書の記載例とは少なからず乖離があります。この乖離を「監基報」で埋めていくことになります。テキストでは、記載項目毎に「監査基準」と「監基報」の両方を紹介していますので、「監査基準」の原文で記載事項の全体像を大きく捉えた後、監査報告書の記載例とテキストを照らし合わせながら、「監基報」で指示されている記載事項を確認されると良いと思います。また、監査意見の類型については、フローチャート形式でどのような状況でどの意見が選択されるのかを示しています。頻出論点ですから、チャートに従って正しく意見の類型が選択できるように準備しておきましょう。

  2:監査論Ⅱ  (講義時間: 17.5時間) 

監査論Ⅱでは、横断的論点・保証業務・制度論等を取り扱っています。

第5章 横断的論点には、不正、継続企業の前提、品質管理、監査業務の契約・引継ぎ等、コミュニケーションなどが含まれます。本試験の実施回によって出題数は異なり、分野横断的内容らしく、実施論や報告論の問題の4つの記述の中に含まれることも多いです。特に不正は出題頻度が高く、2問/20問の出題がある実施回もあるほどです。不正は実施論のリスク・アプローチとの関連性が強いですし、継続企業の前提は報告論との関連性が強い、というように関連する他分野と並行して学習すると効果的です。

第6章 保証業務は、四半期レビュー、(中間監査)、内部統制監査、保証業務の概念的枠組みが含まれます。各々から平均1問/20問の出題があると考えてください。四半期レビューは年度の財務諸表監査との比較の観点が重要です。テキストの対比表を利用して異同を確認していきましょう。内部統制監査は、「これは受験的にパスでいい問題」が出題される頻度が相対的に高い印象です。最低限、章末の過去問分析で繰り返し出題されている論点は正誤判定できるように準備してください。

第7章 制度論には、公認会計士法、金商法監査制度、会社法監査制度が含まれます。監査基準の改訂も学習が一巡したこのタイミングで紹介しています。公認会計士法、金商法監査制度、会社法監査制度からは、各平均1問/20問の出題があり、本試験では前半に出題されます。金商法の開示制度についてや、会社法の機関(会計監査人、監査役)等は企業法でも学習する内容ですが、監査証明の要否や監査概要書については企業法では詳しく確認しない等、重点の置き所が異なるので、相互に補いながら学習してください。施行令の詳細な規定から出題されたり(受験上は埋没問題になります)、むしろ企業法で出題して欲しい内容である場合もありますが、過去問の類題が多い分野なので、テキストで紹介している頻出論点に的を絞って効率的に学習していきましょう。

  3:スマホ用過去問集

隙間時間を利用して理論問題対策ができるように、スマホなどの端末で学習できる過去問集をPDFファイルでご用意しています。記述毎の正誤を判定する形式ですが、4つの記述毎に色分けして収録していますので、この4記述から正しい2記述を選択する、と意識して取り組まれるとさらに効果的です。


以上です。