この章では、長期請負契約の建設業会計特有の勘定科目を用いた会計処理について紹介しています。収益認識基準である工事進行基準原価回収基準については、第3章の収益認識でも紹介していますが、まずはこの第10章から学習される方が分かりやすいと思います。

「収益認識基準」が公表されるまでは、「工事契約基準」に従って、工事進行基準と工事完成基準の選択適用でしたが、工事期間がごく短い工事契約や受注制作のソフトウェアを除き、工事完成基準は採用できなくなりました。ただし、多くの概念・処理が「収益認識基準」に引き継がれていると明記されていますから、「工事契約基準」で学習してきた方も、変更点と特有の表現にさえ注意すれば問題ありません。

工事進行基準では工事進捗度に応じて収益認識することになります。会計基準上、限定されているわけではありませんが、受験上は原価基準によって工事進捗度を求めます。

将来に工事損失が見込まれる場合には、工事損失引当金によって損失の見越計上を行います。工事損失引当金は将来に戻し入れられて実際に生じた工事損失と相殺されることになるので、見積と実績が一致するときは将来の損益は0になります。