簿記論でも財務諸表論でも、総合問題には税効果会計の処理が必ずついてきますので、①繰延税金資産・繰延税金負債の計上②その変動額から法人税等調整額を算定、の流れはマスターする必要があります。

法人税法の学習前に税効果会計の学習を始めるのは厳しいものがありますから、難しい理屈は後からついてくると割り切って、まずは、以下のように処理を機械的に覚えてしまうのがコツです。課税所得計算上の資産・負債の額に関しては何らかの指示が出ますから安心してください。

  • 会計上の資産>課税所得計算上の資産 → 将来加算一時差異で税率分を繰延税金負債(ex.その他有価証券の時価評価益)
  • 会計上の資産<課税所得計算上の資産 → 将来減算一時差異で税率分を繰延税金資産(ex.固定資産の減価償却費や減損)
  • 会計上の負債>課税所得計算上の負債 → 将来減算一時差異で税率分を繰延税金資産(ex.貸倒引当金や退職給付引当金)
  • 会計上の負債<課税所得計算上の負債 → 将来加算一時差異で税率分を繰延税金負債(ex.繰延ヘッジ損益)

利益と所得の違いが税金費用と法人税等支払額の違いとなり、これを法人税等調整額で調整する、という考え方が理解しやすいので、税効果会計を損益側、例えば会計上の減価償却費と税務上の減価償却費の違いで処理しようとしがちです。しかし、税効果会計は資産負債法を採用しており、税率の変更があった場合も考えると、会計上と課税所得計算上の資産・負債の差が一時差異となって、この一時差異に税率を乗じて繰延税金資産・繰延税金負債が計算される。そして、期首と期末の繰延税金資産・繰延税金負債の変動額が法人税等調整額になる、とした方が楽に解けます。

税効果会計は、理論の重要性も高い分野です。資産負債法・繰延法の対比はもちろんのこと、期間差異と一時差異、永久差異、繰延税金資産の回収可能性といった論点は、しっかり準備しておきましょう。繰越欠損金の税効果については、会計基準の一部改正を経ているので、特に注記が求められる理由に注目して確認してください。

税理士試験の場合、テーマ2 連結財務諸表固有の一時差異は、参考程度で十分です。