リース取引は計算も理論も頻出の論点です。

この章で紹介するのは、「ファイナンス・リース取引が中心です。例えば短期的に複数の借り手が利用するレンタカーやレンタルDVDは、財務会計では「オペレーティング・リース」といい、レンタル料を損益認識するだけです。それに対して、レストランの厨房機器やオフィスの複合機のように借り手が独占的にその資産を使用する場合には、経済的実態が(分割)購入に近しいとして売買取引として会計処理することになります。これが「ファイナンス・リース取引」です。

テーマ0 総論の会計基準の変遷については、会計基準の改訂からずいぶん経過しているので「経済的実態が売買取引であるファイナンス・リース取引を賃貸借処理する問題点」という観点で考えてください。

テーマ1 リース取引の分類は、計算に直結する部分なので丁寧に確認していきましょう。判定基準で解説している細かい内容は念のために確認する程度で十分です。まず、経済的耐用年数基準→現在価値基準の手順で、ファイナンス・リース取引か否かを、次に、取引条項等から所有権移転か否かをスピーディに判定できるように準備してください。

テーマ2 会計処理(借手)では、借り手の処理では、ファイナンス・リース取引を「リース物件の購入(リース資産の計上)と使用+リース物件の購入額の借入(リース債務の計上)と返済」と考えます。

特に、リース資産・リース債務の金額の選択と支払利息の計算に適用すべき利率の選択の整合性に注意して、会計処理を確認してください。リース取引開始時に、リース資産とリース債務の計上を同額で行いますが、ここで誤るとその先が台無しになるので、<リース資産・債務の選択>の表をしっかり覚えて選択します。ここで、リース債務は借入の元本に相当リース料は元利均等返済額に相当するので、いずれにしてもリース債務は「リース料総額の割引価値=元本」で計上されていると考えます。従って、リース債務の残高に割引価値の算定に用いられた利率(一定の利子率)を乗じて各期の利息が計算できることになります。リース債務を見積現金購入価額で計上したなら、リース料総額の割引価値と見積現金購入価額が一致する割引率が一定の利子率となり、リース債務を貸手の購入価額等で計上したなら、リース料総額の割引価値と貸手の購入価額等が一致する割引率が一定の利子率となります。

この割引計算の構造が理解できると楽に計算できるようになるのですが、そうでなくとも正しく手順を踏めば正しく処理できますから、繰り返し計算練習を積んでください。計算問題集では、所有権移転ファイナンス・リースと所有権移転外ファイナンス・リースの様々なバージョンを紹介しているので、取引条件・計算条件の異同によく注意して解いていくと理解が深まると思います。

また、所有権移転ファイナンス・リースと所有権移転外ファイナンス・リースで会計処理が異なる論拠を、所有権移転外ファイナンスの性質(テーマ1 会計基準 適10)と関連づけて考えてみてください。

テーマ3 会計処理(貸手)では3つの処理がありますが、リース債権orリ-ス投資資産の残高と各期の損益はどれも同額であるため、個別問題の仕訳問題対策ではむしろ期中の処理や勘定名に注意してください。まずは、どれか一つの計算処理をマスターして、後から仕訳や勘定名で調整すると効率的です。個人的には貸付と同様に考えられる売上高を計上しない処理が簡単でおすすめです。この会計処理の違いには、それぞれ想定される取引状況があるので、その対応関係も確認しておきます。

テーマ4 セールアンドリースバック取引は、最初のセールの部分だけが特徴的で、後のリースバックの部分はテーマ2や3と同様です。結果としてセールもリースバックも無かったように処理できていればいい、と考えるとうまくいきます。