日商1級の会計学では、ほとんどの実施回で問題1は空欄補充か正誤判定の理論問題、問題2と問題3は個別の計算問題が出題されます。商業簿記は総合問題、会計学は個別問題と出題形式は分けられていますが、帳簿組織や本支店会計等を除けば、個別論点の積み重ねが総合問題になっていますので、科目間で学習すべき内容は大きく異なりません。ここでは、総合問題の基礎にもなる個別問題への取り組み方について紹介していきます。

Ⅰ. 学習方法

一連の会計処理を、仕訳を通じて正しく理解することが第一です。その上で、勘定間の関連性のような構造的な部分を理解していきましょう。表やワークシートを利用することで効率的に解くことができる分野もありますが、構造的な理解が伴わないと逆算や推定問題に対応できません。少なくとも勘定間の繋がりやつじつまといったところは意識して学習しましょう。

個人的に、問題集を何回転もして計算手順を体で覚える、という学習方法には否定的な意見を持っています。それよりも、1つの問題を利用し尽くす方法をお薦めします。まず、問われたのが特定の貸借対照表項目ならば、同一会計期間の損益計算書項目、前期や翌期の同一項目も確認しましょう。仕訳の累積として求めるしかない項目か、別の簡単な算定方法がある項目かも確認します。次に、会計処理に選択肢がある場合には、「この状況、この指示があるから、この会計処理」という関係性を確認します。「この状況がこう変われば、この指示がなければ、会計処理がこう変わる」というところまでシミュレーションできれば理想的です。最初からは難しくても、ある程度類題を解くことで、こうした関係性を見つけやすくなってくると思います。

Ⅱ. 教材の紹介

  1:財務会計論Ⅰ  (講義時間: 28.5時間) 

「財務会計論Ⅰ」は、個別論点の計算対策を中心に取り扱っています。まず、全体像として、その会計事象に関する勘定項目、会計処理の基本的な考え方を紹介します。問題1の理論問題の空欄補充や正誤判定は、この全体像で紹介している知識でほぼ対応できます。次に仕訳一覧として、一連の会計処理を確認していきます。仕訳一覧は、時系列に会計処理の流れを紹介するとともに、仕訳毎に説明を付すことでそれぞれの仕訳の意味が分かるような工夫をしています。複数の処理が選択適用される場合には、各処理を一覧して把握・比較して効率的に学習できるよう、場合分けして併記しています。最後に設例を使って、一連の会計処理を改めて確認していきます。ここでも、複数の処理の選択が可能な場合には、各処理が比較しやすいように、同じ設例の数値で会計処理を併記しています。フルカラー・テキストの強みを生かして、同一勘定や関連項目を色合わせして追跡・比較しやすい工夫をしています。章末には、問題1対策として過去問を含む理論の正誤問題・空欄補充問題を収録しています。

第1章 財務会計の基礎は、計算問題を解いていく上で最低限必要な計算知識を紹介しています。同時に問題1の理論問題対策でもありますが、抽象的で難しい部分もありますので、具体的な計算処理がある程度理解できてから取り組んでも良いと思います。

  2:計算問題集Vol.1  (解説時間: 21時間) 

テキスト「財務会計論Ⅰ」に対応する計算問題集です。基本的処理をテキストで確認した後は、動画解説付きの計算問題集で、基本的処理から応用的問題まで計算練習を積むことができます。全ての問題に動画解説がありますので、テキストでは取り上げていない応用的処理も、動画解説で確認できます。そうしたことからも、単なる問題集というよりもテキストの延長として捉えてください。

与えられる資料は本試験の問題2や問題3と同水準です。本試験では仕訳や複数の財務諸表項目について問われるので、問われている数値だけでなく、解説の仕訳のどれが問われても、他の財務諸表項目の数値が問われても解答できるように、できるだけ一連の会計処理を解説しています。一つの数値を求めて終了、ではなく、解説の仕訳等の全てを丁寧に確認するようにしてください。

解答欄に付された重要性のA~Cは、以下のように優先順位の目安としてください。

  1. 基本的な会計処理の問題。
  2. 応用的な内容を含む問題。
  3. 万一本試験で出題されても埋没になる問題。

以上です。