メール配信~監査論 第3回・第4回

第3回と第4回は実施論からの出題です。実施論は事例問題対策を考えなければならない分野ですが、かといって実務経験もない受験生が実務的な対応をイメージするのは難しいと思います。自分の中に論点のストックをできるだけ用意して、出題された事例がその中のどの論点と親和性があるか考えてみるのも一つの方法です。本試験の事例は、明らかに異常値であったり、問題文中に注目すべき事象が暗示してあったりと何らかのヒントがありますから、出題者の意図を読み取ろうという姿勢で資料や問題文を読んでみてください。

009.010.経営者確認書

まず、「経営者確認書は監査証拠である」という視点はよく問われます。ただし、それだけでは質問に対する書面による回答と同様に十分かつ適切な監査証拠にはならないため、その評価や追加的な手続きが必要とされます。一方で、一連の監査手続きの中で、通常、監査の最終段階で監査報告書と交換に入手される経営者確認書は、特別感があるので、経営者に対する心理的効果は他の監査手続きより強いといえるのではないでしょうか。

011.012.017.リスク・アプローチ

リスク・アプローチは、リスク評価の側面とリスク対応の側面があります。特に内部統制の評価は両者にまたがるため(運用評価手続きはリスク対応です)、誤解を生む表現になりがちですから注意してください。例えば、011で「内部統制の理解(リスク評価)」について問われている場面で、運用評価手続きでの検討事項に言及しない、といったことです。

012.の監査アプローチの選択は、評価したリスク(特別な検討を必要とするリスク)の水準やリスクの内容(不正リスク)等によっても影響を受けるので、これを機に確認してください。

017.は監査基準の改訂論点です。平成31年度、32年度と段階的に適用になる監査基準の改訂がありましたので、念のため、過去の大きな改訂については確認しておきましょう。

013.014.018.019.監査手続き

棚卸資産の監査手続きである「立会」は、経営者の実地棚卸計画の検討から始まり、実地棚卸に立会い、実査や抜き取り検査をし、その後の実地棚卸残高までの追跡、期末日前の実施であればフォールフォワードテストと、一連の関連する手続き全体で考える必要があります。

公正価値の評価では、監査証拠として有価証券の時価のように客観的な数値が利用できる場合もありますが、「経営者への質問」とあるので、会計上の見積りのことを問われているのが分かります。問自体は経営者への質問がなされる理由なので、回答の評価の必要性は答案としてなくともよいかもしれませんが、質問の回答の評価等は必須なので質問とセットで用意しておく方が無難です。

分析的手続きは、リスク評価や監査の最終段階においては、財務諸表全体や財務諸表上の大きな区分に対して実施し、異常値の発見や全体的な傾向の把握を目的とするのに対して、実証手続きとして実施される場面では、もっと詳細な財務諸表の要素に対して実施されます。財務情報分析の分野で学習する各種の財務指標をイメージすると良いと思います。例えば、売掛金の回転率を算定するなら、監査人として注意すべき事象は何か、過年度実績・予算・監査人の推定値、いずれと比較すべきか等、シミュレーションしてみてください。

015.016.監査上の重要性

監査上の重要性は、「重要な虚偽表示」の「重要性」と同義の質的な内容も含む概念です。その量的な側面が、重要性の基準値や手続き実施上の重要性と考えると分かりやすいと思います。

以上です。