消費税法メール配信04(会計士論文式・税理士)

第58回 税理士試験の本試験問題を一部改題したものです。
国内取引の判定に関する小問5問で、会計士の論文本試験でそのまま出題されてもおかしくない、良質な問題です。

問1は、中国にある他企業に生産させた製品を国内にある本店で仕入れ処理し、次いで、この商品をアメリカにある別の企業に販売して、同じく国内にある本店で売上げを計上する処理を行った際の、消費税の取扱いについて問われています。
本問は、簡単な問題で、資産の譲渡時における資産の所在場所が、仕入時も売上時も国外にあったので、課税の対象となる4要件のうち、「国内において」の要件を満たしていないため、「課税の対象」となりません。
従って、「消費税法上の取扱は生じない。」と結論づけることになります。

問2は、内国法人であるC社に、海外市場の調査を依頼し、C社は海外で市場調査を行うとともに、レポート等の作成を国内で行った場合の消費税の取扱いが問われました。
役務の提供については、原則として、役務の提供場所で国内取引の判定を行うのは周知の通りですが、本問では、その点が不明確です。このような場合については、施行令の知識が必要になります。消費税法第4条3項2号では、「役務の提供が行われた場所が明らかでないものとして政令で定めるものである場合には、政令で定める場所」として、結論を施行令に委ねています。従って、会計士試験でも、配布される条文集を探しても時間の無駄ということで、施行令第6条2項6号にある結論を覚えておく必要があります。

問3は、日本とイギリスの両国で登録されている商標の専用使用権の使用料を外国法人に支払った場合と、その商標の通常使用権を設定した上で内国法人に使用させ、使用料を受け取った場合の消費税の取扱いが問われました。
前者は、2以上の国おいて登録されているため、貸付を行う者の住所地で判定します。これに対し、後者は登録機関の所在地で判定します。住所地と所在地という言葉の使い分けも出来るようにしたいところです。
本問も施行令知識が問われた問題です。

問4は、日本とアメリカの両国で登録されている意匠権をアメリカの法人に貸付け、使用料を受け取った場合の消費税の取扱いが問われました。
これは、問3の前者と同じく、2以上の国おいて登録されているため、貸付を行う者の住所地で判定します。従って、国内取引の要件を満たしますが、貸付先がアメリカにある法人であったため、輸出免税取引になります。この場合の「消費税の取扱い」は、課税売上割合の計算について言及するのが常套手段となります。

問5は、国外の金融機関への預金からの受取利息なので、「非課税資産の輸出」に該当することは明らかです。この場合の「消費税の取扱い」も、課税売上割合の計算について言及するのが常套手段となります。
本問では問われていませんが、仕入に係る消費税の控除の規定を適用する場合についても言及できるように準備しておく必要があります。