令和元年度 法人税関係法令の改正の概要

毎年この時期に、神戸文化大ホールで「法人税等の税制改正」の説明会が行われており、出席してきました。

会計士試験や税理士試験に影響のありそうな法人税関連の改正項目は、次のとおりです。
① 試験研究費の特別控除の計算
② 中小企業向け優遇措置を受けることのできる中小企業の範囲
③ 特定事業継続力強化設備等の特別償却制度の創設
③ 仮想通貨の譲渡損益及び時価評価損益等の整備

受験生は、改正のことをものすごく気にしますが、法人税は毎年、この程度の改正しかありません。
説明会でも45分程度、パワーポイントを使った簡単な講義だけで、残りの45分は消費税関連の話でした。

今回の改正内容は、2020年2月20日発送開始の「租税法Ⅱ」で取り扱う予定なので、ここでは、ごく簡単に概要について触れるに留めます。

① 試験研究費の特別控除
毎年のように改正されています。今回の改正は、「試験研究の質の向上と積極的な試験研究投資の促進」を目的としたものですが、平成30年度末までの時限措置とされていた、いわゆる「高水準型」が「総額型」に統合される形で廃止されました。なので、計算が楽になるわけではないです。また、総額型の計算パターンも5%で区切っていたところが8%で区切るように変更されています。

② 中小企業向け優遇措置を受けることのできる中小企業の範囲
平成29年度改正により過去3年間の平均所得金額が15億円超の法人(適用除外事業者)は、大企業並みなので、「一定の法人税額の特別控除」などが適用されないこととされていましたが、適用できない優遇措置の範囲が拡大されました。すなわち、適用除外事業者は、「中小企業者等の法人税率の特例」や「一定の特別償却」なども適用できなくなっています。
また、中小企業者等は、資本金1億円超の単一の大規模法人に1/2以上、複数の大規模法人に2/3以上株式を保有されていないことが要件ですが、その所有割合の計算に、原則として、自己株式が除外されることになりました。例外はありますが・・・。
さらに、これまで大規模法人は、「資本金1億円超の法人」でしたが、いわゆる孫会社を利用した優遇措置の不正適用を防止する目的で、「大法人(資本金5億円以上)による完全支配のある法人」も大規模法人に追加されました。

③ 特定事業継続力強化設備等の特別償却制度の創設
青色申告書を提出する中小企業者について、「自然災害への対応力を高める」目的で、「一定の防災設備(特定事業継続力強化設備等)」の取得原価の20%相当額の特別償却ができることになりました。

④ 仮想通貨の譲渡損益及び時価評価損益等の整備
仮想通貨の譲渡損益を計算する際の譲渡原価は、移動平均法又は総平均法で算出することとされ、算出方法は事前に所轄税務署長に届け出る必要があります。届出がない場合は、移動平均法が法定となります。
また、期末保有の仮想通貨については、活発な取引市場のある市場仮想通貨については時価法(翌事業年度に洗替え)で、市場仮想通貨以外の仮想通貨は原価法で評価されることになりました。後者は、会計上は「切放し低価法」とされるため、注意が必要です。
市場仮想通貨として購入したものであっても、期末時点で市場仮想通貨以外の仮想通貨となってしまう場合もあります。このような場合も含めて、法整備が進められているので、理論対策として重要な論点となります。

以上です。