平成31年度第Ⅰ回 短答答練~企業法

今回の短答答練~企業法は、全体として難易度が高めの仕上がりとなっています。本試験における分野毎の問題配分はほぼ安定していますから、答練もそれに倣って作成しています。不正解が多い分野は苦手分野として重点的に復習してください。以下のコメントからは省略していますが、何回かに1度は出題されるという内容も、全5回の出題中には含まれています。

問題1.2. 総則・商行為

単純に知ってますか?という問題が多い分野です。本試験でも2問中1問は正答しましょうということが多く、受験生全体の傾向として苦手とする方が多いと思います。なので、不正解だからと深入りして過度に復習時間を割くことなく、同じ文章が出題されたら正誤判断がつくレベルまで見直してくださったらと思います。

問題3.4. 設立

設立は、発起人の責任や変態設立事項等の論文式試験対策としての重要性が高い分野ですから、短答式試験では2問ほどの出題ですが、力を入れて復習してください。創立総会の規定は株主総会の規定に通じるものが多いですし、設立時募集株式の発行は新株発行と対比させる視点が必要です。また、定款の記載事項と登記事項のシャッフルは定番の出題です。「ここは~の規定と同じ、ここは設立特有の規定」というように分野横断的な視点を持って復習すると、知識が定着しやすいと思います。

問題5~7.株式

株式の発行は資金調達として、株主の権利等は機関としての側面がありますね。例えば、譲渡制限株式は「会社にとって好ましくない者の経営参加を排除したい」という趣旨があるから、自己株式の取得は出資の払い戻しの性格があって弊害が大きいから、というように立法趣旨から考えることも有効です。

問題8~13.機関

機関設計は定番の出題ですから、公開会社か否か、大会社か否か等に整理して覚えていきましょう。機関設計にまつわる条文の規定は階層的で覚えにくいのですが、出題は条文ベースですから条文自体も読んでおきましょう。

株主総会・取締役会・監査役会等の招集権者と招集手続き・決議要件・瑕疵の扱いは正確に覚えておきましょう。役員等の選解任・任期・報酬・兼任の是非、任務懈怠責任等も重要です。取締役(会)が最重要なのはもちろんですが、監査役(会)と会計監査人も公認会計士試験ということで出題が多い傾向にあります。切り口は違えども監査論にも役立つ知識としてしっかりインプットしていってください。

監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社については、あまり細かい規定までは出題されていないようなので、基本的な部分を確認してくださればよいと思います。

問題14.15.会社の計算

資本金等については、資本金と準備金で異なる規定が置かれている部分を特に意識されると良いと思います。

計算書類等については会計帳簿の規定との対比を、公開を前提とする計算書類と機密情報を含む会計帳簿という観点を持って覚えていってください。

剰余金の配当については、分配可能額規定自体(財務会計の知識で対応できると思いますが)よりも、剰余金の分配の承認機関と違法配当がなされた時の責任の方が重要です。

問題16.持分会社、社債等

持分会社は、無限責任社員の存在によって違いが生じてくる株主会社との対比、持分会社の種類によって異なってくる各社員の責任等、出題内容が偏っていますから、過去問や答練を確認してもらえれば十分です。

社債は資金調達の側面もありますが、社債管理者や社債権者集会の規定が特徴的です。社債権者集会の決議に裁判所の承認が必要なことは瑕疵の取り扱いにも関連する重要な知識です。

問題17.18.組織再編等

ます、事業譲渡か組織再編行為かの違いが各種規定に関連することとして重要です。事業譲渡は取引法上の行為だから、という理由で、組織再編行為とは異なる点が頻出問題になっています。

事業譲渡等は会社法上の事業譲渡(467条1項)にあたるかどうかも正確に覚えておく必要があります。

組織再編行為は、まず組織再編行為に共通の規定、次に吸収型・新設型それぞれの中で共通の規定、合併・会社分割・株式交換株式移転のそれぞれで特有の規定、と段階的に覚えていきましょう。

問題19.20.金融商品取引法

今回は某自動車メーカーの不正問題に関連して、有価証券報告書の虚偽記載に関する個人(役員)・法人(発行者)・公認会計士/監査法人の責任の出題可能性が高くなりました。作問のスケジュールは公表されていませんから、時期的な問題から間に合わなかった可能性も考えられますが、もともと重要性の高い論点です。過失責任か無過失責任か、民事責任(損害賠償責任)だけでなく刑事責任(懲役・罰金)も確認しておきましょう。

以上です。