メール配信~財務会計第10回

減損会計の理論です。新基準の中では論点が少ない方のようです。

044.減損処理の論拠

減損処理の対象となる固定資産について、事業投資対象資産の評価はどうあるべきか、という観点からの理論です。事業投資の目的が「時価を上回るキャッシュ・フローの獲得」であることから、時価評価対象外であること、取得後の時価の変動が投資の成果とは無関係であること(金融投資との違い)に結びつけて説明できるようにしましょう。

回収可能価額が正味売却価額と使用価値のいずれか高い方を選択することと、時価評価とを混同しないように注意してください。使用価値により事業投資を回収するという当初の目的が達成できなくなり、のれんが失われて売却が有利となってしまった状況が「正味売却価額>使用価値」の状況であり、たとえ正味売却価額まで帳簿価額を切り下げたとしても、投資額を売却による回収可能額としただけであり、事業投資目的固定資産を時価評価している訳ではありません。

ちなみに、「時価を上回るキャッシュ・フローの獲得」の時価を上回る部分が企業独自の超過収益力、いわゆる自己創設のれんです。

045-1.グルーピング

減損のグルーピングが概ね独立したキャッシュ・フローを生み出す最小の単位とされるのは、グループ内の構成資産間で含み損益が相殺されることを回避するためです。

これと似た論拠が本社費等の考慮で出てきます。本社費等は共用資産に関連する支出ですから、共用資産を含むより大きな単位のキャッシュ・フローとして考えれば良さそうですが、各資産グループのキャッシュ・フロー(共通費として配賦)として考えるとされています。これは、共用資産はより大きな単位で減損処理することが原則とされているため、その構成資産間で含み損益が相殺される可能性が高いことから、先に各資産グループのキャッシュ・フローとして考えて多めに減損損失を求めておくことでバランスをとっています。

いっそ共用資産も資産グループに配分する方を原則にすれば良さそうですが、そうはなっていないところが面白いですね。

045-2.減損の認識の規準

我が国の会計基準では「蓋然性規準=減損発生の可能性が相当程度高い場合に減損損失を認識」が採用されているのは、長期的に獲得されるキャッシュ・フローで投資を回収する投資であるにもかかわらず、割引前キャッシュ・フローが判断基準となっていることから分かります。

「蓋然性規準」は経営者の回収可能性への見込み(のれんの有無)を財務諸表利用者に情報提供できるという利点が指摘されていますが、そもそも将来キャッシュ・フローの予測は経営者の見込みという見積りに依存する主観的な要素であり、投資家をミスリードするおそれのあるものです。そこで、減損の存在が相当程度に確実な場合(割引前キャッシュ・フロー<帳簿価額)に限り減損損失を認識するとされています。この前半と後半の「経営者の見込み」に対する考え方を混同させずに説明できるようにしてください。

以上です。