公認会計士 租税法(法人税・計算)2015-2020過去問分析②

第2回は、過去問(2015年~2020年)で出題された「受取配当の益金不算入」等について検討します。

毎年出題され、配点も大きいので、しっかりと研究しておきましょう。


1. 法人税法の計算への配点は概ね30点ですが、受取配当等の資料から得点できる箇所への配点は、次の通りです。

受取配当等の
益金不算入額
(別表4で減算)
外国子会社からの
配当等の益金不算入額
(別表4で減算)
法人税額控除所得税額
外国源泉税の損金不算入額

控除対象外国法人税額
(別表4で加算)
控除所得税額
外国税額控除
(別表1で控除)
合 計
2015年 3点 1点 1点 5点
2016年 3点 2点 2点 2点 9点
2017年 2点 2点 1点 5点
2018年 3点 1点 1点 2点 7点
2019年 2点 1点 2点 2点 7点
2020年 4点 2点 2点 7点

① 直近5年間の配点の平均値は7点です。租税法の合格ラインは、50点ほどなので、かなり大きなウエイトを占めていることになります。
② 外国子会社からの配当も2年に1回の割合で出題されています。


2. 別表4で減算する「配当等の益金不算入額」の出題論点をまとめてみました。(2015年は改正前のため除外)

完全子法人 関連法人 その他 非支配目的 外国子会社 外子以外
2016年 0円
2017年 短株あり
2018年 負債利子原則法 みなし配当
2019年 短株あり 0円
2020年 みなし配当


① 2016年、2018年、2019年に、外国法人からの配当等が出題されています。外国子会社の要件が特殊なので、要暗記です。2016年の「外国子法人以外の外国法人からの配当等」については、益金不算入が適用されないため、「0円」と解答する必要がありました。また、2019年での出題では、「X国の法律に基づき、・・・ 損金の額に算入されている。」とあり、そもそも二重課税の問題が生じないため、これも「0円」となります。答案用紙に「0円」と記載するのは勇気がいるため、こういったところで受験生は疲弊していきます。

② 内国法人からの配当等については、持ち株割合に応じて、計算方法が異なりますが、配当の計算期間を通じての保有が要件となるのか、その場合、配当等の計算期間が6ヶ月以上の場合の規定が適用されるのか、また、配当等の基準日に保有していれば良いのか、短株は判定に含まれるのか、といった細かな論点まで問われています。

③ 短株は奇数年に出題されているので、2021年は「当たり年」かも知れないです。

④ 関連法人の配当等から控除される負債利子の金額は、2018年を除き、資料に与えられていました。上表では除外されていますが、改正前の2015年にも控除負債利子の簡便法による計算が出題されています。2018年は、原則法による計算を行いましたが、2015年、2018年と出題されていることからすれば、そろそろ、控除負債利子の計算も出題されそうです。


3. 別表4で加算する「法人税額控除所得税額」、「外国源泉税の損金不算入額」、及び「控除対象外国法人税額」の出題論点をまとめてみました。

株式出資 受益証券 その他 外国源泉税の損金不算入額 控除対象外国法人税額
2015年 明らかに簡便法有利 全額
2016年 個別法と簡便法の有利選択 全額
2017年 個別法と簡便法の有利選択
2018年 明らかに簡便法有利 全額
2019年 指示により個別法適用 左同 適用なし
2020年 指示により個別法適用


① 別表4で加算する「法人税額控除所得税額」については、「株式出資」、「受益証券」、「その他」の3区分に分けて計算します。「株式出資」については、「明らかに簡便法有利」が2回、「個別法と簡便法の有利選択」が2回、「指示により個別法適用」が2回となっており、簡単な全額控除の計算パターンは出題されていません。過去問6年分全てにおいて出題されているので、「個別法」と「簡便法」は必須となりますが、慣れれば短時間で計算できるので、必ずマスターして下さい。「受益証券」も本来であれば、個別法と簡便法の有利選択を行う必要がありますが、受益証券自体が2回しか出題されておらず、月数按分は2019年の1回のみです。「その他」は全額加算の計算パターンしかないので簡単です。

② 別表4で加算する「外国源泉税の損金不算入額」は、「外国子会社からの配当等」に係るもので、全額を加算する計算パターンしか知らないはずです。しかし、2019年の出題は特殊で、上記2.①で示したように、「外国子会社からの配当等の益金不算入(減算)」の計算上、対象外とされるため、「外国源泉税の損金不算入額(加算)」の計算においても対象外となります。ただ、益金不算入額については解答欄に「0円」とさせたのに対し、外国源泉税の損金不算入額は、解答欄自体が用意されておらず、アンバランスな印象でした。

③ 別表4で加算する「控除対象外国法人税額」は、「外国子会社以外の外国法人からの配当等」に係るもので、35%ルールの適用を受ける可能性がありますが、2016年、2018年の出題では、35%を超える金額がなかったため、簡単な全額控除のパターンでした。ただ、35%ルールも簡単な論点なので、たとえ、35%を超える金額のある計算パターンが出題されても、正答できるように準備しておきましょう。


4. 別表1で法人税額計から控除する「控除所得税額」と「控除外国税額」の出題論点をまとめてみました。

控除所得税額 控除外国税額
2015年 3.の「法人税額控除所得税額」と同額
2016年 3.の「法人税額控除所得税額」と同額 ※ 控除限度額の規定を受けるため、3.の「控除対象外国法人税額」と同額ではない
2017年 3.の「法人税額控除所得税額」と同額
2018年 3.の「法人税額控除所得税額」と同額 3.の「控除対象外国法人税額」と同額
2019年 3.の「法人税額控除所得税額」と同額 外国子法人が損金経理した配当等に係る外国税額
2020年 3.の「法人税額控除所得税額」と同額

※ 2016年当時の問題では、受取利息から住民税が控除されていたため、同額ではありませんでしたが、現行制度では同額となります。

① 別表1で法人税額計から控除する「控除所得税額」については、現行制度では、別表4で加算する3.の「法人税額控除所得税額」と一致します。

② 別表1で法人税額計から控除する「控除外国税額」については、一般的な計算パターンが2016年と2018年に出題されています。2018年のように、3.の「控除対象外国法人税額」と同額となることが多いですが、控除限度額があるため、2016年は同額とはなりませんでした。この控除限度額の計算は、費用対効果を考慮して、多くの受験生が捨てる論点です。

③ 別表1で法人税額計から控除する「控除外国税額」については、「外国子会社からの配当等」に係る外国税額を計算の対象外とする計算パターンしか知らないはずです。しかし、2019年の出題は特殊で、「外国子会社からの配当等」×95%の金額を別表4で減算できなかった見返りとして、別表1で「外国子会社からの配当等」に係る外国税額を法人税額計から控除することとしています。特殊な論点なので、できなくても大丈夫です。


To Do


1. 受取配当等の益金不算入額について(別表4で減算)

① 益金不算入額を正確に計算できるように、テキスト第4章P02の「2. 計算パターン」の表を必ず覚えること。

② 株式等を正確に4つに分類できるように、①の表の下にある分類要件を全て正確に暗記すること。

③ 直近4年間は、短株とみなし配当が1年交替で出題されています。テキスト第4章P07の「6. 短期所有株式等に係る配当等の額」は必須です。また、みなし配当については、3つの計算パターンのうち、テキスト第4章P11の「(5) 自己株式の取得(市場購入以外)」ばかり出題されているので、これを中心に学習しておきましょう。

2. 外国子会社からの配当等の益金不算入額(別表4で減算)・ 外国源泉税の損金不算入(別表4で加算)について

① 外国法人からの配当等があった場合、どの金額をどの別表のどこで調整するかは複雑です。テキスト第4章P03の表で分かり易くまとめているので、この表を丸暗記すること。この表だけで概ね大丈夫です。

② 益金不算入額の計算式は、「配当等の金額 × 95%」の一本だけなので、これを暗記すること。

③ 外国子会社以外の外国法人からの配当等については、益金不算入の対象外となるため、テキスト第4章P03の「4. 外国子会社からの配当等」にある、外国子会社の定義を正確に暗記すること。

④ 外国子会社からの配当等に係る外国源泉税については、その全額を別表4で関するだけです。第12章の外国税額控除と混同しないよう留意すること。

3. 法人税額控除所得税額(別表4で加算) 控除所得税額(別表1で控除)について

① テキスト第4章P13の下枠破線内の具体例をみて、「株式出資」、「受益証券」、「その他」の3つに分類できるようにしておくこと

② 個別法・簡便法の論点は、毎年出題されていますが、単純なケースばかりです。練習すれば短時間で正解できるので、テキスト第4章P14、15の計算パターンと答練でトレーニングを積んでおくこと。

4. 控除対象外国法人税額(別表4仮計下で加算) 外国税額控除(別表1で控除)について

① ここは、外国子会社以外の外国法人からの配当等に係る外国税を計算対象とします。外国子会社からの配当等の論点と混同しないように、上記2.①でも紹介したテキスト第4章P03の表を暗記すること。

② 控除対象外国法人税額については、35%ルールの適用があるかだけを留意しておけば大丈夫なので、テキスト第12章P02の計算パターンを覚えておくこと。

③ 外国税額控除は、繰越の計算パターンも含め、テキスト第12章P03~08で詳細に解説していますが、余裕のある一部の受験生を除き、捨ててしまって大丈夫です。ただ、捨てるにしても、上記②と同額となる可能性があるので、答案用紙には、②の金額を記載しておきましょう。