公認会計士 租税法(法人税・計算)2015-2020過去問分析①
数回に分けて、租税法(法人税法・計算)の過去問分析(2015年~2020年)を行います。
初回は、総括的な分析で、個別論点については、次回以降、検討していきます。
租税法100点満点のうち、理論40点、計算60点です。
計算60点の内訳は、実施年によって1~2点のぶれはありますが、概ね、法人税法30点、所得税法15点、消費税法15点です。
2017年と2019年は3問、その他の年は2問構成で、下表のように、配点は、問1の総合問題に集中しています。
問1 | 問2 | 問3 | |
2015年 | 総合問題 (27点) | 資産除去債務と外貨建取引 (5点) | |
2016年 | 総合問題 (27点) | 特定同族会社 (3点) | |
2017年 | 総合問題 (25点) | グループ法人税制 (3点) | 繰越欠損金 (2点) |
2018年 | 総合問題 (24点) | 中小企業者の特例 (5点) | |
2019年 | 総合問題 (23点) | 控除対象外消費税額 (2点) | グループ法人税制 (5点) |
2020年 | 総合問題(24点) | 中小企業者の特例 (6点) |
まず、時間配分についてです。会計士試験において、時間配分はとても重要です。
理論、各税法の計算問題の難易度は、毎年異なるので、一概には言えませんが、理論は35分、計算は法人税40分、所得税20分、消費税25分が目安になります。
理論を35分で仕上げるのは正直、厳しいですが、35分を超えた分だけ、計算に回せる時間が刻一刻と減っていくことを念頭に置いておく必要はあります。
所得税と消費税は、問題量に比して時間を多めに配分しているので、難問だと感じたら、早めに切り上げて、法人税に時間を回すようにしましょう。
法人税法の計算問題は、40分で解くには分量が多いので、全体を見渡して、解きやすそうなものだけを解き進めていきます。
問1の総合問題の1点も、問2以降の個別論点の1点も、同じ1点です。問2以降の個別論点は、一瞬で解ける問題もあれば、ある程度時間が必要な問題もあります。総合問題で捨てる箇所があるわけですから、問2以降の個別論点を切り捨てることに躊躇する必要はありません。
大手専門学校の合格ラインを総括すると、法人税法の計算については、2015年50%、2016年40%、2017年53%、2018年50%、2019年58%、2020年度62%になります。解答箇所30箇所のうち、20~25箇所を埋めて、55%にあたる16~17箇所を正解するイメージでよいでしょう。
本試験問題では最初に、「全般的な資料及び注意事項」の記述があります。
過去6年間共通して、以下の記述がありました。
(A)当社は、当期末において同族会社には該当しない。
(B)当社は、消費税及び地方消費税の経理処理として税抜き方式を採用している。問題文中の取引金額は全て税抜きの金額である。
(C)問題文中の住民税は、道府県民税及び市町村民税の合計金額である。また、事業税等には地方法人特別税を含んでいる。
(A)ですが、同族会社には、①同族会社の行為計算の否認、②同族会社の特定株主等、③特定同族会社の留保金課税の3つの特別規定が設けられていますが、「同族会社には該当しない。」ということなので、特別規定を気にすることなく、解いていけば大丈夫です。
(B)についても、消費税のことは気にせず、資料にある金額をそのまま使用して解けば大丈夫です。
ちなみに、私の会計事務所では、申告書作成上、クライアントに「税抜き処理」を選択してもらっています。ただ、「税抜き処理」の仕訳は煩雑なので、経理の人には「税込経理」で仕訳を行ってもらい、会計システムが「仮受消費税」と「仮払消費税」を自動計上する仕組みになっています。
(C)の前半ですが、法人も自然人と同じく「人」なので、住民税が課せられます。法人の場合は、「固定費+法人税×税率」という計算式で、都道府県民税と市町村民税が課せられます。この合計額を「住民税」とするのは、会計では常識であり、これをあえて「注記事項」としてくれているだけです。また、後半についても、「地方法人特別税」に対する別表4の調整は、事業税と同じなので、地方特別法人税を「事業税等」としていることに対して、特別な注意を払う必要はありません。
(A)~(C)の注意事項については、毎年同じなので、本試験においても、同じであることを一瞬で確認して、時間短縮に繋げて下さい。
次回は、「受取配当の益金不算入」について検討します。