第150回 日商1級 答練④~商業簿記
問題1(連結会計)
論点は、子会社2社のうち1つは在外子会社、在外子会社による子会社株式の取得です。
問1 非支配株主持分、利益剰余金
まずは国内子会社の支配獲得日から1年後の非支配株主持分と期末利益剰余金の金額です。有価証券の評価換算差額と土地の評価差額はありますが、成果連結の連結修正仕訳のない問題なので、確実に得点したいところです。
問2 為替換算調整勘定
在外子会社への支配獲得日から1年後の為替換算調整勘定です。
まず、「資産・負債のドルベースの時価を円換算した金額」と、「純資産をHR換算(利益剰余金の増加額はAR換算)した金額」との差額を計算します。この金額のP社持分80%が連結B/Sに計上されます。
次に、「のれん発生時のHR換算額から償却額(AR換算)を控除した金額」と、「ドルベースで計算した期末ののれんをCR換算した金額」との差額を計算し、先の金額と合計します。
問3 資本剰余金
子会社株式を追加取得した場合に、資本剰余金が変動するのはご存じの通りです。追加取得時の仕訳項目を下書きに書いて、それを埋めていくような形で解くとスムーズです。
問4 期末利益剰余金
在外子会社が国内子会社の株式を取得していますので、難易度が高く、後回しにすべき問題です。P社が直接的に追加取得を行った訳ではありませんが、在外子会社が取得した20%のうち、16%は親会社持分と考えることが出来るので、P社のS社持分は60%から76%に増加したことになります。従って、当期のS社利益剰余金増加額の76%が連結上の利益剰余金を構成することになります。
この論点よりは、本試験対策として、在外子会社のタイムテーブルの方が重要になるので、そちらを中心に復習して下さい。
問題2(連結会計)
論点は、30%(持分法適用会社)から70%への追加取得、税効果会計、未達を含む商品売買(ダウンストリーム)、貸倒引当金繰入額の調整、手形割引、償却資産の売却(アップストリーム)です。
問1 のれん
のれん発生額は、土地の評価差額を支配獲得日に一括計上し、「支配獲得日のS社株式時価で再評価した投資額」と「P社持分」との差額で計算します。これは得点できる問題です。
問2 非支配株主持分
S社純資産額は期首残高に、+S社の当期純利益、△償却資産の売却益及び減価償却費の調整額×0.6(税効果)を加味すれば、期末のS社純資産額が算出できるので、これに非支配株主持分30%を乗じることで解答が得られます。商品の未実現利益及び貸倒引当金繰入額はダウンストリームのため、親会社の利益剰余金の変動項目であって、S社純資産額の計算には影響させる必要はありません。そうすると、調整項目は少ないので、本問も正解したい問題です。
本問では使わないですが、段階取得に係る差損益の算出も検討しておきます。
15%→70%の段階取得では、「既存株式を支配獲得時の時価で再評価した金額」と「既存株式の取得原価」の差額で「段階取得による差損益」を算出しました。これに対し、本問のような、30%(持分法適用会社)→70%の段階取得の差損益は、「既存株式を支配獲得時の時価で再評価した金額」と「既存株式の持分法評価額」との差額で算出します。
問3 税金等調整前当期純利益
税金等調整前当期純利益は、連結P/Lを作成して解答を得る必要があり、本問の場合、未実現利益、貸倒引当金繰入額、備品の売却、税効果会計と、多くの論点が含まれているので、本試験であれば、手をつけない方が賢明です。ただ、1級の場合、最終的な解答だけを問う問題よりも、P/Lの全項目が問われることが多いので、解説の計算プロセスには、きちんと目を通すようにして下さい。
問4 法人税等調整額
個別上の金額(借)に、未実現利益×40%(貸)、貸倒引当金繰入×40%(借)、備品売却益×40%(貸)、減価償却費×40%(借)を加味します。これも合わせたい問題です。
全体として、1級の本試験よりもやや難易度を高く設定しています。50%の正解率で十分に合格点となる問題です。