この章は重要な論点が山盛りです。テーマ1 総論だけは軽めで大丈夫です。全体像の理論は「財務会計論Ⅱ」でもう一度しっかり紹介しますし、財務構成要素アプローチは、テキストのCase1と2、計算問題集の問題7が解ければ十分です。
テーマ2 償却原価法は、社債の発行側で紹介していますが取得側(有価証券)でも同様の手法が採られています。基本的に利息法は利払日に償却原価法を適用するので、利払日と決算日が異なるときには月割りによる配分が必要な点に注意してください。特に利息法は、分割償還が組み合わさると複雑になりますが、満期の異なる複数の社債が発行されていると考えて、別個に処理すると分かりやすくなります。
テーマ3 貸倒引当金は、一般債権・貸倒懸念債権・破産更生債権等に区分して貸倒引当金を設定します。約束手形(2026年を目処に廃止される見込です)の不渡りや電子記録債権の支払不能の状況から破産更生債権等であると判断させることがあるくらいで、通常は債権の区分は所与として貸倒引当金を算定します。一般債権の貸倒実績率の計算は、計算問題集の問題1ができれば問題なしです。割引計算の必要なキャッシュ・フロー見積法は少し難しいですが、分割返済の場合も返済期日の異なる複数の債権だと考えて別個に計算すると分かりやすいと思います。
テーマ4と5 有価証券は、期末の保有目的別評価が最も重要です。これは、外貨建有価証券の円換算を伴う期末評価にも関係してきます。満期保有目的の債券とその他有価証券の債券は償却原価法の適用があるので、テーマ2の社債の評価と同様に有価証券の償却原価を算定していきます。負債と資産の違いから貸借が逆になりますが、金額の算定方法は基本的に同じです。ただし、社債は発行から満期までで算定しますが、有価証券は取得(発行と同時とは限らない)から満期までで算定します。その他有価証券は時価評価差額の処理に当り、税効果会計が適用されます。ここに関しては第14章の税効果会計を学習した後に戻って確認してください。
有価証券の保有目的の変更は、その他有価証券以外からの保有目的の変更は、変更前の期末評価によると考えることができます。その他有価証券からの変更は、特に部分純資産直入法採用時に前期末に評価損を計上したか否かで非対称的な処理となる点に注意が必要です。