商業簿記・会計学よりも得点しやすいので、本試験では、商業簿記・会計学の失点を工業簿記・原価計算で挽回することで合格ラインに到達する受験生が多いです。制限時間がなければ、満点の狙える科目ですが、滞りなく解答できてぎりぎり間に合うように作問されているので、日頃からスピードアップを意識して学習する必要があります。
Ⅰ. 学習方法
公認会計士の短答式試験と異なり、問題数が少ないのが日商1級試験の特徴です。問題数が少ないので、本試験で苦手分野の問題が解けないと、他の問題で挽回することができません。問題数の多い会計士の短答式試験であれば、苦手分野からの出題は捨ててしまえばよいのですが、日商1級では、そういった作戦をとることはできません。従って、苦手分野を作らないように心がけてください。
今の話とやや重複しますが、多くの受験生が苦手意識を持つ「意思決定会計」を「好きな分野」にしましょう。頻出分野ですから、意思決定会計を苦手にすると、なかなか合格できません。難解なので、「得意分野」とするのは難しいかもしれませんが、「好きな分野」にはできるはずです。本試験会場で、受験生がみな横ならびになって一斉に「ヨーイドン」で解き始めるわけで、その場で頑張った人が勝ちです。総合原価計算のような暗黙のルールみたいなものもなく、「考えて解く分野」ですから、「考えること」が好きになれば、意思決定会計も好きになれるはずです。
会計士の試験は過去問の作り直しが多いので努力型の試験といえますが、日商1級の工業簿記・原価計算はパズル的な問題が多く、ヒラメキ型の人はあまり苦労せずに合格している印象です。普段から考えることがルーティンとなっている受験生が短期間で合格できる設定になっていることを意識しながら学習するのがよいと思います。
Ⅱ. 教材の紹介
1:工業簿記・原価計算Ⅰ(講義時間:30時間)
「工業簿記・原価計算Ⅰ」は、会計士講座の「管理会計論Ⅰ」と共通になっています。会計士の短答式過去問も多く収録されていますが、日商1級の学習用にも非常に効果的ですので、積極的に取り組んで下さい。テキストは、総論から直接原価計算までを収録しています。第1章から順に進めていくよりは、出題可能性の高いところから学習していく方が、効率的に合格レベルに到達するはずです。総合原価計算や標準原価計算から始めてみると良いと思います。
2:工業簿記・原価計算Ⅱ(講義時間:23.5時間)
「工業簿記・原価計算Ⅱ」は、標準よりも後ろの分野を取り扱っています。日商1級の試験では、第2章の一部(戦略的コスト・マネジメントのP25以降)が試験範囲から除外されていますので、講義データもこの部分については、参考資料としております。工業簿記・原価計算の本試験は、本テキストの第1章、第2章以外の範囲からの出題が多いので、工業簿記・原価計算Ⅰよりもテキストは薄いですが、しっかり学習して下さい。特に、意思決定の分野がよく出題されます。
3:個別問題集
個別問題集は、主に会計士短答式試験の過去問を分野別に編成したものです。まとめて解くのはきついので、現段階では、解答を見ながらでも構いませんから、毎日少しずつ進めるようにして下さい。
以上です。