この章で紹介するのは、「ファイナンス・リース取引が中心です。例えば短期的に複数の借り手が利用するレンタカーやレンタルDVDは、財務会計では「オペレーティング・リース」といい、レンタル料を損益認識するだけです。それに対して、レストランの厨房機器やオフィスの複合機のように借り手が独占的にその資産を使用する場合には、経済的実態が(分割)購入に近しいとして売買取引として会計処理することになります。これが「ファイナンス・リース取引」です。

ファイナンス・リース取引では、テーマ2 借り手の処理テーマ3 貸し手の処理を順に紹介しています。借り手の処理では、ファイナンス・リース取引を「リース物件の購入(リース資産の計上)と使用+リース物件の購入額の借入(リース債務の計上)と返済」と考えます。

リース取引開始時に、リース資産とリース債務の計上を同額で行いますが、ここで誤るとその先が台無しになるので、<リース資産・債務の選択>の表をしっかり覚えて選択します。ここで、リース債務は借入の元本に相当リース料は元利均等返済額に相当するので、いずれにしてもリース債務は「リース料総額の割引価値=元本」で計上されていると考えます。従って、リース債務の残高に割引価値の算定に用いられた利率(一定の利子率)を乗じて各期の利息が計算できることになります。リース債務を見積現金購入価額で計上したなら、リース料総額の割引価値と見積現金購入価額が一致する割引率が一定の利子率となり、リース債務を貸手の購入価額等で計上したなら、リース料総額の割引価値と貸手の購入価額等が一致する割引率が一定の利子率となります。

この割引計算の構造が理解できると楽に計算できるようになるのですが、そうでなくとも正しく手順を踏めば正しく処理できますから、繰り返し計算練習を積んでください。計算問題集では、所有権移転ファイナンス・リースと所有権移転外ファイナンス・リースの様々なバージョンを紹介しているので、取引条件・計算条件の異同によく注意して解いていくと理解が深まると思います。

貸し手の処理は3通りありますが、結果として、リース投資資産orリース債権の額も損益の額も同額になるので、どれか一つの計算処理をマスターして、後から仕訳や勘定名で調整すると効率的です。個人的には貸付と同様に考えられる売上高を計上しない処理が簡単でおすすめです。

テーマ4 セール・アンド・リースバックは、最初のセールの部分だけが特徴的で、後のリースバックの部分はテーマ2と同様です。結果としてセールもリースバックも無かったように処理できていればいい、と考えるとうまくいきます。